担当の先生に、イラストをみてもらっていた時に「フェチがないね」と言われた。
ノってないのがバレバレだったのだ。
実際「少女漫画のような根拠のない線」を先生は好まなかったみたいで、自分で本のコンセプトから考えても根拠のない線をかいてはいけないと、その時は思った。
でも描き手として自分が描きたいようにかけない、というのはすごく苦痛だった。
根拠のない線ではなく根拠のある線をかけるようにするために、ポーズ集を借りてきたりして、クロッキーしたりトレースしたりを繰り返した。確かに少し上達した。以前の自分とは違う絵の描き方が見えてきた。
自分の中で根拠のある線と根拠のない線の垣根がとれたような瞬間もちらついた。結局つかめなかったけど。それはこれからの課題。
ただ、こういう描き方をしていると、自分の描きたいように描いているのではなくて、なんと言うか、習字で楷書を習っている時の気分になってくる。
理想とする線が既にそこにあるので、それになるたけ近づけていく、というか。
だから今まで絵を描くことで満たされていた部分が今は同じように満たされない。それが少しつらかった。
少し前に、落書きをしていると「なんで(以前と比べて描き方が)そうなったの?」
と尋ねられたので、「根拠のない線を消そうとして、クロッキーをしまくったらこうなった」
と答えると、彼は笑いながら「気持ち悪い」、と言った。
私も気持ち悪いと思う。何かが乖離してしまった。
イラストレーションや装丁の具体的なビジュアルを考えるにあたって関わってきそうなところをいくつかあげる
□善悪が交代する
□魔法も出てくる
□時代はいつだかわからない
□抽象的だけど印象的な登場人物
□当時の西洋人から見たエキゾチックであろう登場人物の衣装設定(タミーノは日本の狩衣を着ている設定だけど、舞台はエジプトになっている)
□普通の市民向けのお芝居のようなオペラ
普通に市民に向けたオペラ、ということは、細かいところ(時代考証など)を無視してファンタジーの世界を楽しめるものを目指したと思われる。
魔笛の魔法は単純明快なものになっている。(笛を吹きゃ何とかなる、鈴を鳴らせば何とかなる)
フリーメイソンの教義が演出にも関わってきているという指摘は本にもあったけれど、そこは鑑賞者側にとって重要ではない。
「ファンタジックでよくある感じ、でもちゃんと楽しめる世界観をどう演出するか」
をつめる方向でいこう、と思った。
肝心のどう演出していくかについて。
1 子供の頃に読んだ童話全集のような雰囲気を挿絵黄金期の作家のようなイラストレーションで演出する
2 もとはオペラだ、ということをふまえて、紙を大量に使って本の中で劇場的空間と時間の流れを作り、そこにファンタジックな装飾をする。ただし独りよがりにならないようにする。(話を知らないとわからないだとか、ただ無駄にでかいだけの作品にならないようにする)
1と2の違いは、前者はオーソドックスな絵本として仕上げることを目標としていて、後者はより実験的に本の中の構造と時間軸に立ち向かうことを目標としている。
結果的に1を選んだ訳だが、これはちょっと失敗だった。イラストレーション、なかなかかけなかった。
2にした場合、読み物としての魔笛を楽しませることができなくなるであろうなと思ったのと、実験ばかりに目がいって魔笛そのものに目がいかなくなるのはちょっとつまらないなと思ったこともあって、オーソドックスな演出を選んだ。魔笛という題材をすごく魅力的に思っていたので。
あと、頑張れば自分もイラストレーションが描けると勘違いしていた。
やっぱりずっと描いてきた人と比べたら見劣りしちゃうのはあたりまえだ。
業者に頼みたかったあああああああああというのが本音。
自分はすごくぶきっちょで綺麗に裁断するの苦手です。
三方断ちはキンコーズです
製本の本はこれを参考にしてます
手で作る本
もっと自由に!手で作る本と箱
本当は箱も夫婦箱を作りたかったのですが、自分の手先の不器用さが露呈しました。
もう自分で作れないものは作らないと誓う。お金払って作ってもらう。
いつか自分の制作に字游工房の書体を使いたいなと前から何となく思っていた。
http://www.jiyu-kobo.co.jp/
卒業制作用に何かしら書籍本文用書体を買わないといけないな、というのも思っていた。
それなりにお金もかかるので選択は慎重にしなければならない。
今回卒業制作で使用した「游明朝36ポかな」はその名の通り36pt=約50Qの活字を元に作られているわけだから、用途はもともと見出し用。
何故本文に使ったのか。
正直に言えば使ってみて周りがどういう反応をするか見てみたかったというのもある。
魔笛は、「チープな魔法・想像力をくすぐるキャラクター・善悪のどんでん返し・キャラクター各々の愛の形」がキーワードだと思っている。善悪が途中で交代するものの話自体は大衆向けのたわいもないものだ。
これの装幀を「スタンダード、でもどこか懐かしく、昔みた児童文学全集の物語の様な」雰囲気にしたかったため、「何となく癖はあるが古くさすぎず本として読めそうな書体」を捜した。
ちなみに卒業制作の本文は12Qで組んでいる。行送りは21.75H。
この書体は「を」の形にため息がでる。
36ポかなのページ
http://www.jiyu-kobo.co.jp/ytl/y36k.html